2015年 10月 17日
彼と行く筈だった叶えられなかった空間へ |
彼が師匠のように慕ってた人がいた
その人は昼間は大工
夜はバーをやっていた
元々彼が下積み時代のバイク屋さんにお客さんとして来た人で、そこから長い長い付き合いの人
よく彼は落ち込んだり悩んだりすると、その人の店に1人で行き話を聞いてもらったりしていた
途中から一番の仲間のYちゃんを連れて行ってからは、ただ飲みバカ騒ぎやお客の女の人にちょっかい出したりしていたらしいけど(笑)(彼は、普段は違うがYちゃんといるとYちゃんのペースに合わせそんなバカ騒ぎばかりしていた)
その人は昼間は大工
夜はバーをやっていた
元々彼が下積み時代のバイク屋さんにお客さんとして来た人で、そこから長い長い付き合いの人
よく彼は落ち込んだり悩んだりすると、その人の店に1人で行き話を聞いてもらったりしていた
途中から一番の仲間のYちゃんを連れて行ってからは、ただ飲みバカ騒ぎやお客の女の人にちょっかい出したりしていたらしいけど(笑)(彼は、普段は違うがYちゃんといるとYちゃんのペースに合わせそんなバカ騒ぎばかりしていた)
彼が大好きなお酒
ラム酒ロンサカパを教えてもらったのもここ
彼にとっては特別な場所だった
Yちゃんと行くようになってからは、終電なんてお構い無しで朝まで飲みタクシーで帰宅が多かった
そんな師匠と呼んでいた人がやっていたバー
彼は私と初めて逢った日
みんなで飲んだ後お開きになり、楽しかったし、まだ飲み足りなかった私に彼が2人でもう一軒行こうと誘ってくれた
その時に連れて行ってくれたのが、このバーだった
知り合いがやってる店があるから行こうと。
でも、あいにくお休みで閉まっていた
(結局このバーに2人で来たのは、この時が最初で最後になってしまう)
それから間もなく私達は付き合う事になった
それからは私が「あの店に行きたい!」と言っても「あすこは俺の場所。俺だけの特別な場所だから」と連れて行ってもらえなかった。
彼が落ち込み、そこに行き話を聞いてもらい落ち着ける。彼らしくいられる為に必要な場所だし、特別な場所、自分だけの場所・・・それなら仕方ないと思っていた。
でも、1番の仲間のYちゃんを連れて行くようになった
それからは彼は落ち込んだ時に行く事はなくなった
ただYちゃんと飲んで騒ぐ場所になった
そうなると話は別だった
「Yちゃんを連れてくなら私だって行きたい!行ってみたい!」そう言った。
勿論彼が楽しむ場に行きたい気持ちもあった。
でも何より彼が師匠として昔からお世話になってた人に会ってみたかった。
でも彼の答えはNOだった
……
Yちゃんが絡むと基本女がいる
色んな悪さばっかりしていた
だから彼がYちゃんと行動を共にする事が正直嫌だった
お金があるYちゃんは本当に彼をつれ回した
彼もYちゃんを学生の頃から見てる弟みたいな存在
大切な仲間であり、一番のお客さんでもあった
だから断れない、ある意味いいなりだった
彼も酷くその事では悩み苦しみ・・・全て0にしたい終わりにしたい、疲れた・・・と、よく言っていた。
当時私は、彼のそんな葛藤も考えずYちゃんとひっきりなしに朝帰りを繰り返す彼に愚痴り文句を言った
「俺だって本当は早く帰りゆっくりしたい」
そう言う彼に
「なんでそんなにYちゃんの言いなりにならなきゃいけないのよ!」と文句を繰り返した
彼はいつも「俺だってしたくない、仕方ないんだよ!」と私に怒鳴った
そんな風にしていつも私達はケンカになった
彼の葛藤をわかってあげられなかったんだ・・・あの頃の私には
今思えば、本当にしんどかったと思う
Yちゃんに振り回され、疲れ果てて帰れば私には文句を言われて・・・
「もういい。疲れた」よく電話口で言われた
なんでもっと考えてあげられなかったのだろう
結局私は自分の想いばかりだったんだ
弱っている彼を更に傷つけたのは私だったのだ
当時本当によくYちゃんとキャバクラへ行っていた
そして「今キャバ、早く帰りたい」そんな風によく連絡をくれていた
そこでも私は「また?!もうYちゃん置いて帰ってきなよ!」と文句を言いまくりだった
でも結局帰りは朝方
私は毎回心配で不安で眠れない
彼からの連絡をひたすら待っていた
彼は必ず帰宅したら連絡をくれていた
そんな時よく彼は言っていた
「他の女といると、ちいに逢いたくなる。やっぱりちいがいい」と。
「はぁ?!なんだそれ。」だ。
正直嬉しい。けど他の女は余計・・・複雑だった
でも、彼は疲れきっていたんだ
私に優しさや癒しを求めていたのかもしれない
でも私は怒りや文句、愚痴ばかりを繰り返した
彼の本心を見ようともせず
嫉妬や不安から彼を責めてばかりいた
……
彼だけの場所じゃなく彼とYちゃんの場所になったバー
私を連れて行けないと言う彼
恐らく、そこでも女が絡んでるのかな★
そんな風に思った
でも、暫くすると
「ちいを連れて行きたい。紹介したい」
そんな風に言ってくれるようになった
はじめてそう言ってくれた時、本当に嬉しくて涙がこぼれた
彼の特別な場所。彼がお世話になってる人に紹介してもらえるんだ・・・と。
でも、その人は昼間は大工さん
その影響からかバーも休みが不定期で、結局なかなかタイミングが合わず連れて行ってもらえる事は、なかった。
彼も私も一緒に行ける事を本当に楽しみにしていた場所だった
ずっとずっとその日を待ちわびていた
その場所へ、そしてその人Kさんに彼と一緒に会う事を楽しみに待っていたんです
そのバーの存在、場所は知っていた
彼の店のホームページのリンクに貼られていた
彼が旅立ち
私はKさんの事を思い出した
Kさんは彼が旅立った事を知っているのだろうか?と。
彼が特別に思ってた人、お世話になった人
その人に伝えよう。そしてお礼を言おうと手紙を書いた
ずっとお話は聞いていました、と。一緒に行こうと約束していたのに結局そちらにお邪魔する事は出来ませんでした、と。彼の事、本当にありがとうございました。そう伝え遺影にもなった最初で最後の写真も入れた。
そして彼の好きなロンサカパを彼の為に作ってあげて下さい。と手紙と一緒に5千円を添えた。
その手紙を読みKさんはYちゃんに連絡をした
私を店に連れてきてほしい。おいで、と。
そしてYちゃんとUさんと一緒に念願だったKさんの店に行く事が決まったのだ。
彼とずっとずっと一緒に行きたかった店
やっと行ける。けれど彼と2人じゃなく彼の仲間達と行く・・・とても複雑で切ない気持ちだった。
それでも彼の特別な人の特別な場所、彼が大切にしていた場所、空間にやっと行ける事がとても嬉しかった。
そして当日
3人だと思っていたらYちゃんの奥さんも一緒だった
Yちゃん同様、ノリがよくて物怖じせず派手で声も大きくよくしゃべる、昔で言うイケイケ風な奥さん、Yちゃんも全くそんな感じで凄い似た者夫婦だった。
正直私は、その2人のノリについていくのはキツかった
店に到着するとKさんと、そのパートナーの方(結婚はされてない感じ)が出迎えてくれた
想像より小さな店だった
Kさんは私を見ると
「手紙ありがとう。葬儀にも参列させてもらったんだよ。その時にロンサカパが置いてあったのを見て本当に堪らなく悲しかった。あの酒は俺があいつに教えてやったんだ。あなたが置いてくれたと聞いてあいつ喜んでるだろうなって思ってたんだ。ありがとう。」と。
そして「ずっとあいつに、連れてこい、一緒に来いって言ってたんだよ。やっと会えたね」そう言ってくれた
もう涙が止まらなかった
カウンターと小さなテーブルが2つあった
ひとつのテーブルに4人・・・いや、絶対彼もいたので5人で座った
そしてそのテーブルにKさんは彼の写真を持ってきてくれた
私が送った写真だった
「いつも置いてあるんだよ」そう言ってくれた
そして彼がいつも飲んでいたお酒を頼んだ
ロンサカパを炭酸で割りライムを入れたカクテル
Kさんは「まず彼の分」そう言い彼の写真の前にお酒を置いた
また涙がこぼれた
Kさんの気持ちが嬉しかった
その後、私達みんなに同じ物を作ってくれた
彼がいつも飲んでいたお酒
彼が好きになったきっかけの飲み方
この場所でこれを飲み美味しい!と喜んでる彼が見える気がした
そんな彼がいつも飲んでいた物を彼の仲間達と飲んだ
彼が大切にしていた空間
時には1人でカウンターに座りKさんに話を聞いてもらっていたり、時にはYちゃんとバカ騒ぎしたり
彼がいた空間に来れた事を嬉しく思った
やっと来れたんだ、と。
でも、やっぱり一緒に・・・2人だけで来たかった・・・照れ屋な彼はきっと私の事なんて紹介しないんだ、私の事なんてお構い無しに勝手に1人イスに座り、私は頭を下げながら彼の隣に座る、そんな様子を見てKさんに突っ込まれる・・・きっと、そんな感じだったんだろうな、一緒に来たかったな・・・そう想い涙がこぼれた。
Kさんにも彼との話を色々聞いた
知りあって暫くKさんの家に彼は入り浸っていた事
Kさんが飼っていた犬がいて、なかなか人にはなつかないのに何故か彼には、とてもなついていていつも彼が散歩に連れて行ってあげていた事・・・この話しは彼に以前ある墓地を通りながら「昔ここによく犬の散歩に来てたんだ~。知り合いの家の犬でさ、すげぇ可愛かったんだ」と聞いていたので、もしや!と思い「墓地が散歩コースでした?」と聞いたら「そうそう!」と。
彼が話してた話がそうやって繋がる事が嬉しく、そして切なかった・・・
何度も何度も【彼がここにいたらな】そう思い切なくなった
Yちゃん夫婦は凄いノリでKさんに突っ込んだりバカ騒ぎをしていた
私は、その横で1人彼の写真を見つめ涙をこぼした
本当は沢山沢山Kさんと彼の話しをしたかった
でも、そんな雰囲気ではなかった
みんなで来た事を少し後悔した
でも、絶対1人では来れなかった
彼と訪れるはずだった場所に来る勇気は私には、なかった、無理だった・・・だから本当に有難いお誘いだった、けど、少し後悔した。
帰り際Kさんに「またおいで」そう言われた
「ありがとうございます」そう伝えたけれど、もう来る事はないだろう・・・そう思った。
本当に来たかったのは彼とだから。
彼に連れてきてほしかったのだ
でも、彼がお世話になっていたKさんに会えて、大切にしていた空間にいる事が出来た、彼のいつもの場所に来れた
それで満足だった。
ここは彼の場所。
一度でも来れただけでいい。そう思った。
帰り道1人になり夜道を歩きながら呟いた
やっと行けたね~。
いいお店だね。Kさんも素敵な人だね。
あすこに、よしはいたんだね。
勝手に行ってごめんね
でも、やっぱり一緒に・・・2人で行きたかったな
泣きながら暗い夜道を歩いた
そして思った
違う形になってしまったけれど
またひとつ、叶ったな
またひとつ、悔いはなくなった
これでいいんだ。
そう思った
by yoshi721chii
| 2015-10-17 00:08
| 後悔の日を過ぎて