2015年 09月 09日
最後の夜 |
2014年の9月9日の夜
知らぬ間に寝ちゃってた、ごめん。
そう彼は謝ってたのに
私は許せなかった。拗ねていた。
眠れなくて辛い彼が少しでも眠れたのだ
本当なら「眠れて良かったね」
今までの私なら言っていたはずなのに、あの日は言えなかった。
本当は、寂しかったんだ・・・。
私は彼と話したくて仕事を早く終わらせた
彼も私と話したくて待っているだろう
そう思っていた
なのに彼は待っていてくれなかった。寝ていた。
待ってるって言ったのに!と寂しかったんだ
本当は違うのに・・・
彼は待っていようとした
だけど極度の睡眠不足から突然睡魔に襲われた
彼の意思ではなかったのに
ちゃんと冷静に考えればわかったのに
優しく話しかけてくる彼に
「お風呂入るから」と冷たく言った
彼は「うん。わかった。また後でね。待ってるから出たら教えてね。」そして「ちい。大好きだからね」と言った。
【大好き】その言葉に私の心はほんの少し和らいだ。
でも、まだ寂しさから拗ねていた
「お風呂でたよ」そうLINEをするとすぐに電話がきた。
彼は、とてもとても優しかった
「ゆっくり入った?ちゃんと髪乾かした?」と。
その日は火曜日だった。
私は次の日から三連休だった。
だから今週は久しぶりに彼の家に泊まれる
次の日水曜日に泊まりに行く事は前の週に逢った時に伝えてあった。彼も喜んでいた。
なのに彼からは何も言ってこなかった。
もう明日なのに・・・と。
もしかしたら彼は本当は楽しみじゃないのかも・・・勝手に思い勝手に寂しくなった。
約束してたんだから私から「明日何時ぐらいに行けばいい?」(彼は仕事なので)そう言えば良かったのに。
拗ねてる私は言えなかった。
どうせ明日の朝連絡くるし、その時に決めればいいとさえ思っていた。
そして彼が言った
「ちいは明日から連休だね。良かったね。ゆっくり出来るね!」
そう言われた時
「久しぶりにお泊まり行くからね」そう言えば良かったのに
「うん。ありがとう」そう告げた。
そして彼は言った
「明日冷蔵庫来るんだよね?良かったね。やっと冷たい物を冷たいまま飲めるね」と。
次の日午前中に冷蔵庫が届くごとになっていたのだ。
何度も何度も良かったね。そう優しく彼は言った。
いつもは早く電話を切ろうとする彼がその日は、なかなか電話を切ろうとしなかった
暫く無言が続いた後、彼はとびきり優しい声で
「ちい。ありがとう。いてくれて、ありがとう。・・・ちい。本当に大好きだからね。」そう言った。
胸が苦しくなり切ないような悲しいような複雑な気持ちになった。
……
なんだろう?なにかが違う。
そう頭の隅で思った。
そして思った。
きっと疲れてるんだな。落ち気味なんだな。と。
何度かそんな時もあった。でも、逢えば自然と落ち着いていた。
だからきっと大丈夫。だと。
明日の夜から泊まりに行くし、逢えば、一緒にいれば大丈夫だろう。
そう私は勝手に思ったんだ・・・
……
「ん?どうしたの?私こそありがとうだよ。いつも一緒にいてくれてありがとう。私も、よしが大好きだからね」
そう告げた。
彼は「ありがとう。ちい。本当に大好きなんだからね。本当だよ。信じてね。」そう言った。
「ありがとう。わかってるよ。私もだからね」
そう告げると
「嘘じゃないよ。本当に大好きなんだよ」と繰り返した
その後も何度も何度も「大好き」を繰り返した
こんな事1度もなかった
こんなに何度も何度も・・・
明らかに普段とは違っていた
その「大好き」を止めたのは私だった
既に1時を回っていた
「よしは明日も仕事でしょ?大変なんだし、そろそろ寝た方がいいんじゃない?疲れてるんだしさ」
そう私が言った。
よしは「うん。そうだね」と小さな声で呟いた
「お薬もらったんだもんね?もう飲んだの?今日は眠れるといいね」と言うと「うん。ありがとう」と答えた。
そして「おやすみ」を言い合い電話を切った。
「また明日ね」いつものように、そう言おうと思ったけど、なぜだか言わなかった・・・。
その電話が、彼と話した最後の電話になった。
電話を切ってすぐに今度はLINEがきた。
「ちい、大好き。ほんとに大好きだよ。」と。
それに私は
「私も同じだよ。大好きだからね」と答えた
「ありがとう」彼は言った。
私は今まで最後までLINEを返していた
彼で終わらす事はなかった
必ず私は答えてきた
彼からのLINEには必ず返事をしていた
でも、あの日は返さなかった
彼からのLINEで終わりにしたのだ
きっとこのまま電話と同じように延々と「大好き」が続くんじゃないかと・・・
彼も疲れてると思ったし、正直私もあの日は珍しくずっと忙しくて疲れていた
だからわざと返さなかったのだ
私がおわらせたんだ
だって明日があると思っていたから
明日の夜には逢えると思っていたから
まさかあれが最後のLINE
最後のやりとりになるなんて・・・
思ってもいなかったから
……
後悔しかない。
いくら後悔しても遅いし仕方がないのかもしれないけれど
そんなのわかっているけど
後悔しかないんだ。
……
最後の休憩の時
トイレだよ、なんて嘘つかず話せば良かった
寝てしまいごめん。と謝る彼に、大丈夫だよ。寝れて良かった!と言ってあげれば良かった
拗ねる事なく素直に、明日行くからね!久しぶりにゆっくり出来るね!楽しみだね。そう言えば良かった
電話もLINEも最後まで聞いてあげてれば良かった
眠くたって疲れてたって、いつまででも聞いてあげる事出来たのに・・・
本当は、もっと何か言いたかったかもしれないのに
あのままずっと電話やLINEを続けていたら・・・
そう思わずにいられないんだ
明日夜行くからね!楽しみだね!
そんな言葉を口にしていたら彼も楽しい気分になったかもしれない
明日どうしようかな♪そんな気分で頭がいっぱいになったかもしれない
5日後は私の誕生日だった
毎年夜に逢い居酒屋で過ごすのがお決まりになっていたから、まだ何も話したり決めたりしていなかった
5日後の私の誕生日、どこ連れてってくれるの?そう言えば良かった
そしたら彼はその事で頭がいっぱいになったかもしれない
ある人に言われた
私は彼の最後の砦だったのかもしれないと。
彼は私にもっともっと弱音を吐きたかったのかもしれない
甘えたかったのかもしれない
優しくされたかったのかもしれない
彼には私しかいなかった。そんな最後の砦だった。
なのに、あの日拗ねて素直じゃない私は優しく出来なかった
寝ちゃった
それに対してなんで拗ねたりしたんだろう
話したがっている彼にトイレだと嘘をついた自分の事は棚に上げて・・・彼だって本当は話したくて待っていたのに
彼は自分を責めてばかりの人だった。
だから寝てしまった自分を責めてしまったのかもしれない
やっぱり俺はどうしようもないと。
彼の心が決まったのは、あの時なのかもしれない
私が、そう仕向けてしまったのかもしれない
本当の事は、彼しかわからない
でも、そう思わずにいられないのだ
彼はあの日の夕方、メーカーさんとLINEをしている
日曜日に荷物が届くように手配をしている
そしていつものように作業も途中のまま店を閉めていた
明日があるからそのままにしたんだ
先があるから日曜日の約束もしたんだ
まだ、その時にはそんな事思ってもいなかったんだ
でも、私との最後の電話最後のLINEでは明らかにおかしかった
もうあの時には決めていたのかもしれない
私の言動が彼をそう導いたとしか思えない
あの日仕事が終わってから
ご両親とは殆ど接していない
誰とも連絡をとっていない
私だけなのだ。私しかいないんだ。
彼を追い詰めたのは私なのだ
みんな言う
自分を責めるな。あなたのせいじゃないと。
いえ。私なんです。
彼を救えたのは私だけだったのかもしれない
そんな私が彼を追い詰めたんです。
最後の砦が、こんな私だったからなんです
私のせいなんです。
それは譲れない事実なんです。
そして・・・
なぜ、大丈夫だ。と勝手に思い込んでしまったのか。
明日逢えるし大丈夫。
勝手な私の思い込み。
明らかにおかしいのはわかっていたのに・・・
おかしいのに何で大丈夫だなんて
あの時「何か変だよ。どうしたの?」
そう優しく聞いていたら。
ちゃんと彼に話を聞いていたら。
違っていたはずなのに。
彼はきちんと私にサインを出していたのに
助けを求めていたのに
勝手な思い込みで大丈夫だなんて決めて
見て見ぬふりをしたのは私なのだ。
よし
昨年の今頃は、まだ寝ていたよね
やっと眠れていたのにね
それなのに、ごめんね。
眠れたんだね!良かった!
そう言ってあげたかったのに、ごめんね。
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by yoshi721chii
| 2015-09-09 22:02
| 後悔の日