2015年 10月 20日
はじめての月命日は彼の家へ |
2014年10月10日
その日は彼が旅立ち初めての10日
はじめての月命日だった
この日は彼の家に行く事になっていた
彼といつも一緒にいた幸せだった場所
そして今、彼が待っている場所へ
彼が好きな食べ物や飲み物、そしてご両親が食べられそうな物を数点用意して彼の家・・・幸せだったあの場所へ行った
あの頃必ず一緒に玄関に入った前を歩く彼はいない
当たり前だった事がもう叶う事はない、そんな事が悲しくて切なくて堪らなかった
あの頃と変わらずお母さんが玄関に出迎えてくれた
そしてお母さんは私を抱きしめ泣いた
私も泣いた
ただただ何も言わずお互いに暫く泣いた
お父さんがやってきて
「いいから早く部屋に入りなさい」と言った
まだこの頃は仏壇もなく
和室に彼の遺影、そして遺骨は白い布がかけられた棚に好きな物と一緒に並べられていた
お母さんは彼の(遺骨)前に座り
「よっち。大好きなちいさんが来てくれたわよ。良かったわね」そう言ってまた泣き崩れた
お父さんがお母さんを抱き抱え
「お線香あげてあげて」そう言いお母さんを和室の横のリビングの椅子に座らせた
私は彼に向き合いお線香をあげ遺影の彼と遺骨を見つめた
実感はない、それでも彼の遺影と遺骨を前に涙が止まらなかった
本当にこんな事あるのだろうか
これは夢じゃなく本当に現実なのだろうか
本当にこれが・・・目の前のこれが、あの大好きな彼なのだろうか
わけがわからなかった
その後、私も隣のリビングへ行った
テーブルには沢山のお菓子と飲み物がおかれていた
お母さんは私を見つめ、また涙を流した
お父さんが私を見つめ頭を下げたそして
「本当に、ちいさんには申し訳ない。幸せにしてあげられず本当にごめんなさい」そう言った
私はその言葉を聞き泣きながら
「いいえ。私は本当に幸せでした。よしに沢山沢山幸せにしてもらいましたから」そう言った
今度はお母さんが泣きながら
「早くあんなバカ忘れて、いい人見つけて幸せになってね」
そう言った。
「忘れられるわけありません。私はもう十分幸せでしたから。もういいんです。他の人なんて、よし以外考えられません」
そう言い「でも、本当に本当に、よしはバカです、大バカです」
そう言った。みんなみんな泣いていた。
その後、嬉しい話を聞いた
彼の元奥さんが彼が愛した子供達を連れて来てくれたと。
彼のご両親は「もう縁を切ったんだ、終わったんだから(彼がこうなった事)知らせるつもりない」そう言っていた
でも、遺族年金は例え別れても子供にいく仕組みになっているとの事で役所から連絡が来たらしく、お父さんは知らせてほしくない渡さなくていいと言ったそうだが決まりは決まりですと強く言われたそうで、その連絡が元奥さんの元へ役所からいったのだ。
そして元奥さんから連絡が来てご両親は仕方なく伝えたそうなのだ。
そして元奥さんは子供達を2人連れて九州から彼に会いに来てくれたんです。
私は、それを聞いて本当に本当に嬉しかった
だって、彼が会いたくて仕方なかった子供達
でも今の旦那さんに悪い、我が子を育てあげられなかった俺は最低の人間だ、そんな最低な人間は子供達に会う資格なんかない
そんな風に自分を責め
会いたくても会えない想いに苦しんでいた
そんな誰よりも会いたかった子供達
その子供達が会いにきたんです
やっとやっと会えたんです
こんな最悪な再会になってしまいましたが・・・
きっと彼は喜んだはず。そんな彼の想いを考えたら嬉しくて仕方なかったんです。
彼の遺影を見つめ「良かったね!よし。やっと会えたんだね」そう心の中で呟いた
そしてご両親にも「良かった。きっと、よし喜びましたね。ずっとずっと会いたかったんですから」そう言った
そしてお母さんは呟いた
「そうなのよ、あの子はずっと会いたがっていたのに・・・あの人(元奥さん)が会わせてくれなかったから!だから、あの人に言ってやったのよ!あなたがこの子達を会わせてくれていたら、あの子は死なずにすんだかもしれないのに、あなたのせいよ!って。そう言ってやったわ」と・・・。
元奥さんとご両親は当時相当揉めたらしく、子供達の取り合いのような形になっていた、そしてご両親がせめて会いたいとの連絡にも会わせるつもりはない、と。
彼が子供達の事でおかしくなったのもご両親は、わかっていたから、もし子供達と離れず一緒に暮らせていたなら彼は死ななかったはずだ・・・そんな想いから元奥さんに対して憎しみになっている。
確かに彼は自分は一生子供達に会うつもりない
そう決めていた。
でもご両親には、もう一度だけ子供達に会わせたいと。
年老いたご両親を見てると大好きだった孫に最後に、元気なうちに会わせてあげたい、そう望んでいた。
そして長い時間をかけて元奥さんへ連絡を続け両親にだけ会わせてほしいと説得を続けた。
この事は彼に聞いていて、元奥さんとのやり取りのメールも読ませてもらっていた。
そして数ヶ月かけてやっと元奥さんからOKが出た
2014年の秋頃。
暑い夏が終わり涼しくなってきた頃に、ご両親を旅行がてらゆっくりと色々と周りのんびり時間をかけて九州まで行き子供達に会わせよう、そんな計画をたてていた、ご両親にも伝えてあったのだ。
元気なうちに孫に会わせてあげる
彼の夢だった
そんな夢がやっと叶うはずだったのに・・・
夢を目前にして彼は1人旅立ってしまった
でも、彼の元奥さんが子供達を連れて来てくれた
それは、そんな彼の夢も、同時に叶った瞬間だった
元奥さんは、こんな事を言っていたと言う
娘は将来、こっち(東京)の専門学校に来る事になるかもしれない、そうなったら娘をこちらで・・・と。
お母さんは大激怒したらしい
冗談じゃない!今まで会わせないと散々言ってたのに都合がよすぎる!勝手すぎる!と。
確かにそうだ・・・元奥さんも、どうなんだろう。そう思った。
でも、もし、よしがいたら大賛成だったかもしれない
誰よりも大好きな娘と住めるのだから
困ってるんだから仕方ない、そんな理由でもつけて一緒にいる事を喜んで選んだだろう。そう思った。
でも、お母さんは違った
「もし、よっちがいたとしても、そんな事許しません!都合がよすぎる!そう言ってやったわ!だって、よっちにはあなたがいるんですから。あなたも一緒に住んでるここに、あの子を住ませるわけなんか行かないじゃない!ねぇ」そう言った。
その気持ちが嬉しかった。
でも、きっとよしの気持ちを考え私はきっと娘さんと一緒に住んだだろうな・・・そう思った。
よしの会いたくて仕方なかった苦しみを痛い程わかっていたから、喜んで一緒に住んだだろう、そして【父親】としての彼の姿も見たかったな・・・と。
元奥さんと子供達は彼の部屋に1泊した
子供達に彼の物を何個か形見として渡したと
そしてお母さんは元奥さんに言ってやったと
「よっちには、彼女がいたと。毎週のように泊まりに来てて、これから一緒に住む事になっていた。よっちは不幸なんかじゃなかった、幸せだったのよ!」と。
それを聞いて涙が溢れた
そうだよね。よし。
私達、幸せだったよね。
そう心の中で、よしに呟いた。
色んな事が、もう少しだった
もう少しで色々な事が変わったのに・・・
悔しくて仕方なかった
ちょっぴり悲しく切なく思った事があった
彼は、別れてからずっと13年以上
子供達の事を想い続けてきた
一時たりとも忘れる事なくずっと
でも、そんな子供達は彼の事を全く覚えていなかった
東京にお父さんがいる。とは伝えてあったらしいが全く覚えていなかった
仕方ないかもしれない
上の娘さんでさえ4歳だったんだ
忘れてしまって当たり前なのかもしれない
ただ、彼の部屋の人形やフィギュアは当時と変わらないらしく、その風景だけは何となく覚えている。との事だった。
それを聞いて仕方ないんだけれど、なんだかとてもとても哀しかった・・・
彼はこんなにも想っていたのに・・・と。
そして思った
どんな形でもいい、一度だけでも会わせてあげるべきだったと。
会ったらきっと、彼の想いの形も変わっていただろうと。
彼は子供達に頑として会おうとしなかった
会う資格なんかない、今の旦那さん・・・本当の子供のように大切に育ててくれているその人に申し訳ない。その想いもあっただろう・・・でも、彼は子供達に会うのが怖かったのかもしれない。そう思った。
俺に会えず悲しい寂しい想いをしているかもしれない、もしかしたら恨んでいるかもしれない、そんな子供達に会うのが怖かったのかもしれないと。
覚えていない・・・そんな事思ってもいなかったのかもしれない。
一度でも会えば彼の心は、少しでも軽くなったのかもしれない。と。
そうさせてあげられなかった事が悔しかった
でも、こんな形になってしまったけれど
本当に会えてよかった
そして、2人を連れて来てくれた元奥さんには感謝の思いでいっぱいになった。
そんな話を伺い
彼の部屋に行きたいとお願いをした
また3人で彼の部屋に行った
彼の部屋は、かなり片付けられていた
ガランとした部屋を見て無性に悲しくなった
そんな私を見てお父さんは
「いつまで、こうしてても仕方ないからね」と言った。
わかってる。わかってるけど・・・
彼の部屋、彼の場所なのに、やめて!もうやめて!これ以上彼の場所を壊さないで!触らないでよ!!
そう叫びだしたい衝動にかられた
こんな風になってしまった部屋を見て、彼も悲しいんじゃないだろうか・・・そう思ったら堪らなかった
彼は必ず椅子に座り机に足を乗せてタバコを吸った
だから私は机の上に買ってきたタバコを置いた
「必ずここでタバコ吸ってたんですよ」そう言って
私とお母さんは、本当に常に泣いていた
そんな私達2人にお父さんは言った
「2人ともいい加減にしろ、もう仕方ないんだ。前へ進め!」
お父さんは現実的だ。しっかりしている。
ちゃんと私だってわかってる。
でも、出来ないから辛いし苦しいんだよ・・・
またリビングに戻り
お父さんに店もだいぶ片付いたから数日中に不動産屋に受け渡す事に決まったから。と聞いた
よしが毎日一生懸命頑張っていた場所
何度も一緒に行った場所
そんな大切な、彼の場所がなくなる・・・
よしの場所なのに。。。
切なくて堪らなくなった
彼の遺影を見た「いいんだよ。これで」そう笑いながら言ってるように感じて涙が流れた
最後にもう一度よしにお線香をあげた
そしてお母さんは
「よっちは、最後にちいさんに出会えて好きになり本当に幸せだったわよ。決して寂しい気持ちのままいったわけじゃない、よっちは幸せだったわよ」
そう言ってくれた
その言葉が何よりも嬉しかった
私は暫くその場で泣きじゃくった
そんな初めての月命日だった
by yoshi721chii
| 2015-10-20 16:04
| 後悔の日を過ぎて