2015年 09月 14日
沢山の準備に追われた家での最後の時 |
彼のお通夜の日の朝
私は彼が好きそうな「いいんじゃん」と言ってくれそうな喪服を来て、彼が好きなお酒ロンサカパを持ち彼の家へ向かった
お父さんに駅まで迎えに行くから連絡をくれ
と言われていた
でも、やっぱりそんな甘えられない
そう思った時、思い出した。
彼は、雨が降ると必ずお父さんに車で送ってもらっていた
いつもはバイク通勤だけど、雨が降ると決まって送ってもらっていた
「親父が送ってくって言うから」と言っていたが、なんだかんだ言って、よしはお父さんに甘えていたんだ
お父さんも優しかった
そんな事を思い出した
そして思った。
今日だけは、お父さんに甘えよう。
雨の日のよしみたいに甘えよう。
駅に着く前、お父さんにメールをした
よしは、いつも雨の日、お父さんに甘えて送ってもらってましたよね。
私も、そんな風に今日はお父さんに甘えようと思います。
もうすぐ駅に着きます。
迎えに来て下さい。・・・と。
図々しいな、と頭の片隅では思いながらもお願いをしてみた。
すぐにお父さんから電話がきた。
打ち合わせで抜けられないから親戚の人間が迎えに行くから。と。
親戚の方に申し訳ないと思いながらも言ってしまった手前、お願いします。待っています。とお父さんに答えた。
暫く待つと、いつもの車で親戚の方が来てくれた。
車の中で私に気を使い彼の話を色々してくれた
前日の夜、お父さんが送ってくれた時は暗かったので車内も余り見えなかった
でも、その日は昼間。
色々なモノが目についた
その前の週に彼の隣に乗った、あの時のまま変わらなかった
彼が置いたままの小銭やタオル
そして、見つけてしまったんだ
助手席のドアポケットに置かれたグミを。
それは、その前の週
最後に逢った日
あの日に車の中で食べたグミだった
彼と一緒に食べて、余ったのでまた次にでも食べようと「置いとくね」そう言って私が置いておいたグミだった
また一緒に食べよう
そう思って置いておいたモノだった・・・
見つけた瞬間涙が一気に溢れた
突然泣き出した私に隣の親戚の方は「どうしたの?大丈夫?」と声をかけてくれた
私は話した
先週逢った時に一緒に食べたんです。でも余ったからまた次に一緒食べようと置いておいたモノなんです。と。
泣きながら話す私に
「辛いよな、本当に。・・・本当に辛いと思う」
そう言った。
彼の家に到着すると、私はそのグミを鞄にしまった。
彼の家に入り、ご両親や皆さんにご挨拶をして
彼の元へ行き呟いた
「おはよう。よし。来たよ。」
その後は、またずっと彼の隣にいた
暫くすると死化粧をしてくれる方がいらした
……
この話しは4月に『おしゃれなんですね』の記事でも書かせて頂きましたが、改めて書かせて頂きます。
……
担当の方は私より少し年上ぐらいの女性。アシスタントの方は男性だった。
ご両親は、その方達にお願いしますと伝え居間へ行ってしまった
私は、その場から離れる事が出来なかった
以前、親戚の叔父が亡くなった時、死化粧でまるで別人のように変わってしまった事があった
顔色から口紅まで、完全に作られた顔になっていて
その事に驚き悲しくなった事があったのだ
だから嫌だった。怖かった。
彼が、そんな風に変わってしまったら・・・
そう思ったら離れられなかった
隣でじっと見つめている私がいる
恐らくとてもやりにくかったと思う
担当の方は、まず彼に手を合わせてくれた
そして彼の顔に触れて、色々見ていた
髭や眉毛をじっくり見て
「おしゃれだったんですね」そう言った
「眉毛も、こんなにちゃんと整えられている男性の方は、初めてかもしれません」と。
「そうなんです。本当に、おしゃれな彼なんです。眉毛はよく気にしてました。髭もいつもシッカリ手入れしてたんです。最近では白髪が生えてきて気にしてたんで先週抜いてあげたばかりだったんです」
そう泣きながら話した
「そうだったんですか。きれいになって良かったです」
そう言って下さった。
彼は調度その頃、揉み上げから顎まで髭を生やそうと伸ばしはじめていた。
顎髭より薄いその部分をどうしましょうか?剃りますか?と聞かれたので「彼は伸ばそうとしていたので、そのままにしてあげて下さい」とお願いした。
その部分以外の毛を剃ってくれた
そして化粧をしてくれた
化粧をして頂いてる最中
よしに心の中で
「知らない人にこんなに顔を見られいじられ、照れ屋のよしは堪らないね。恥ずかしいでしょ?「なにやってんだよ!」そう怒鳴りながら起きあがっちゃいなよ」そう呟いた
化粧が終わった。
決して作られた顔じゃなく自然な顔だった
赤紫がかった顔色が、明るくパッとした
いつもの彼のようだった
その後、髪の手入れをしてくれた
勝手に整えるわけじゃなく
いつもどんな感じにしてるのか、普段の彼を教えて下さいと言って下さった。
私が伝え、整髪料でいつもの彼らしい髪型にしてくれた
本当にありがたかった
「いつもの彼みたいです。ありがとうございます」
心を込めてそう伝えた。
おふたりが帰られた後
「良かったね。よし」そう彼に言った
それから暫くは、のんびりした時間が流れた
私は彼の隣で。ずっと語りかけていた
普通に話したり耳元でナイショ話しをしたり
沢山の人が少し離れた場所にいたけれど
彼の隣には私だけで、ふたりの空間だった
時間が経つ事に髪が崩れてくるので、その度に彼のヘアワックスで髪を固め直した
彼が家を出る時間が少しずつ近づいてきていた
彼と一緒に旅立たせるもの
一緒に持たせるもの
前日のうちにだいたい決めておいた
彼が大好きだったボーリングシャツ
本当に沢山あった中から2枚を選んだ
私が誕生日に買ってあげて気にいってくれて良く着てくれていたピンクのシャツ・・・このブログのプロフィールに載せている彼が着ているピンクのボーリングシャツ。
それとその年の誕生日に仲間達に買ってもらい、当時良く着ていた黄色のシャツ(遺影の写真でも着ています)その2枚と、大好きだった黒のベスト。
大好きな帽子・・・これも沢山の中から選んだ。
私が初めてのクリスマスに買ってあげたニット帽、彼がネットで買い気に入って最後までよく被っていたハット。
本当は、おしゃれな彼の為にもう1つぐらい入れてあげたかったけれど、お父さんから「もういい」と言われて断念。
そして彼が昔から好きでハマっていた靴やブーツ
これは本当に沢山あった
お気に入りも数足あったので、せめて3足ぐらいは入れてあげたかったけれど、靴は1つでいい・・・と、お父さんの言葉で一番よく履いていた物だけになった
これは暫くの間、後悔した。
本当に靴が大好きだった、せめてもう1足ぐらい入れてあげれば良かった・・・
ても家族でもない私は余り強く言えなかった
それらを前日から彼の傍に用意して置いてあった
そろそろ葬儀担当の方がみえるかもしれない
そんな時に思い出した
あれ?ジーパンやパンツ類を1つも入れていないと
お父さんに急いで伝えた
「あっ、そうだった。よく履いていたジーパンを上から持ってきておいて」そう言われて彼の部屋へ取りにいった
その時に、ボーリングシャツをもう1枚持っていった
ピンクのシャツを買ってあげた時に、もう1枚気に入って自分で買ったシャツ
襟が豹柄であとは黒。バックプリントやロゴは白で、彼にとても似合い彼も気に入り良く着ていた物だった
前日2枚のシャツを決めてから、ずっとそのシャツが頭から離れなかったのだ。
ずっと頭のどこかにあった。
きっと彼が入れてほしいと言っている。そう思った。
そして、お父さんにお願いをしてそのシャツも入れてもらえる事になった。
そんなバタバタで準備が整った頃
葬儀担当の方は、やってきた
by yoshi721chii
| 2015-09-14 02:47
| 後悔の日