2015年 09月 12日
彼が旅立った場所へ |
あの日
2014年9月10日
夜の6時半を回った頃。
私と母は彼のいる警察署を出て彼の家へ向かった
彼といつも一緒に過ごした
彼が当たり前のように隣にいた
幸せが溢れたあの場所へ
そして・・・
彼が旅立ったあの場所へ
着いた。
2階を見上げた。
彼の部屋とベッドルームが見える。
明かりがついていた。
本当は彼がいるんじゃないか。そんな風に思った。
深呼吸をして呼び鈴(チャイム)を押した
呼び鈴は門の所にあり、門から玄関まで少し距離がある
玄関が開き年配の女性が出てきて
私を見てわかったのか「どうぞ」と言った。
必ず、よしと一緒に入った玄関に母と入った
年配の女性が2人いた
そして私を見て頭を下げ泣いた
別の年配の女性がお母さんを支えて連れてきた
お母さんは私に抱きつき「よっちが・・・よっちが・・・わぁあああ」と泣き叫んだ
もうダメだった・・・
私もお母さんに抱きつき大声を上げて泣いた
よしの前では冷静でいられたのに
ダメだった
次から次に涙が溢れて
ただただ悲しくて悲しくて泣いた
かなりの時間だったと思う
ちょっぴり落ち着いた私に年配の女性の方が「良かったら上がって」と言ってくれた
お母さんは私の腕をとり部屋にいた沢山の人に(お母さんの姉妹や、その旦那さん達親戚が福島から駆けつけて来ていた)私の事を「よっちの彼女」と紹介してくれた
そして「こんな子がいるのに・・・なんで、わぁああ」と、また泣き崩れた
私は母の存在を忘れていた・・・正直考えられる状態じゃなかった。
思い出したように、私の後ろについてきてる母を「私の母です」と、よしのお母さんに紹介した
最悪な形での初対面になってしまったのだ
母が、よしのお母さんに何か話していた
私は、その場所が堪らなくなった・・・
いつもよしがいた場所
4人でその居間で一緒にご飯を食べお酒を飲んだ事が思い出された
涙が溢れて立っていられずしゃがみ込み泣いてしまった
親戚の方が「可哀想に可哀想に」と私の背中をさすってくれた
隣でまた別の女性が
「あなたが可哀想で堪らない」と泣いてるのを見て
余計に涙が止まらなかった
ほんの少し涙が止まった頃
どこかに出掛けていたお父さんが帰ってきた
私がいる事に気が付くと
駆け寄ってきた
そして・・・私が座っている目の前にきて
土下座をした
そして頭を床につけたまま
「すまない。本当にすまない。息子がこんな事になってしまって・・・本当にちいさんには申し訳ない」
「ごめんなさい・・・助けてやれなくて」
そう泣きながら叫んだ
正直そんな風にされるとは思ってもいなかった
本当にビックリして、お父さんの肩を抱き上げ
「あやまらないで下さい。いいんです。私は。だから頭を上げて下さい」と言った。
お父さんは顔を上げ
「すまない。本当に・・・あんな息子で申し訳ない・・・幸せにしてあげられなくなってしまった・・・本当に、すまない」そう私の目を見て泣きながら言った。
お母さんも泣き叫んでいた
わたしも涙が次から次に溢れてきた
みんなみんな泣いていた
その後、お父さんとお母さんから
彼がどこでどんな形で・・・と教えてもらった
彼の・・・推定時刻は朝の6時
お母さんが彼を起こそうと彼の部屋へ行ったのが8時・・・2時間近く彼はそのままでいたんだ。
お母さんが説明する時「あなた達が、いつも一緒にいたあの部屋・・・いつも一緒に並んで寄りかかったりしていたあのラックで・・・」そう言った時は本当に切なく苦しくなり「イヤだイヤだ」と言いながら私は泣いた。
その後、遺影の話しになった
写真嫌いな彼の写真は家にもなく
持っていないかと聞かれた。
「本当に撮られるの嫌いでずっと撮らせてくれなかったんです」そう言った瞬間・・・1ヶ月前の仙台松島旅行の時の写真・・・初めて撮らせてくれた写真を思い出した。
でも、あれはやっと撮らせてくれた最初で最後の大切な写真。私だけの大切な写真。ファインダー越しに優しい瞳で私を見つめてくれている写真。普段の彼じゃない穏やかで優しい顔。
写真がなく遺影が作れず困っていると皆が言った。
どうしよう・・・たった1枚の、1枚だけしかない写真・・・本当に悩んだ。
そして、言った。
「たった1枚だけあります」と。
初めて撮らせてくれた写真なんです・・・そう言いながら涙が止まらなくなった。
そして、その写真を見せた
みんな。いいじゃない!優しそうに笑ってるし!
何て言う中で、お母さんだけが
「あの子じゃない。これは、よっちじゃない!顔も浮腫んでパンパンだし目も腫れて・・・違う!」と反対した。
次の日の昼までに写真を用意しなくちゃいけなかった
もう一度家中の写真を確認して、もしなければ私の持ってる写真でお願いするかもしれない・・・そう言われて唯一携帯でメールを出来る親戚の方とメルアドを交換して連絡します。との事だった。
次の日、彼を警察署に昼の12時ぐらいに迎えに行くとの事で、その前に来ますと約束をして母と帰ろうとすると、お父さんが駅迄送ります。と言ってくださり、車に乗り込んだ。
いつもいつも彼と乗った車
必ず運転席には彼がいたのに・・・
お父さんが座り運転する車の中で、とても違和感を感じて、虚しくなった。
あんなに当たり前だったのに
もう彼が運転する隣に乗る事は出来ないんだ・・・そう思ったら、また涙が溢れてきた。
駅に着き、お父さんは
「今日は本当にすみません。ありがとう。明日駅まで迎えに来るから連絡してね。明日も宜しくお願いします」そう言って帰って行った。
電車に乗ると、母は話しだした
お母さん大丈夫かしらね
お父さん優しそうな人ね
家が広くて綺麗なのね
2階には何部屋あるの?
延々と話し続けていた
私は何も考えられなかった
何がなんだかわからなかった
ただただ茫然としていた
地元の駅に着くと母が言った
「お腹空いたわね。何か食べて帰ろう」と。
言われてはじめて気が付いた。
朝から何も食べていなかったと。
でも、食べたくなかった
お腹も空いていなかった
「食べたくない。いらない」
そう言う私に
「食べなきゃダメよ。私はお腹減ったし」そう言いラーメン屋に入った。
私は一番小さな普通の醤油ラーメンにした。
昔ながらのシンプルなラーメンが来た
あぁ、よしもこんな普通のラーメン好きだったな・・・そう思ったら喉の奥が詰まったように苦しくなった。
「少しでも食べなきゃダメよ」母に言われたが
どうしても食べられなかった
スープを、ほんの一口飲むのが精一杯だった
そして帰宅した
夜の10時近くになっていた
一体何がおきたんだろう
これは何なんだろう
わけがわからなかった
夢なのか現実なのかわからないような
ふわふわしたしたような状態だった
気が付けば朝だった
朝6時
親戚の方からメールが来た
やはり写真がなく、あの写真を遺影にしたいので写真にしてきてほしいとの事だった
やっと撮らせてくれた
あの最初で最後の写真が遺影に決まった瞬間だった
私だけのたった1枚の彼の写真が・・・
とてもとても複雑な気分だった
コンビニへ行き画像をプリントアウトした
その写真を見た瞬間
あの日の、彼が思い出された
いつものように後ろ姿を撮ろうとした瞬間
「いいよ」そう言って写真を撮らせてくれた彼
照れてるのだろう
怒ったような困ったような表情の彼
でも、とてもとても優しい目をしているんだ
ファインダー越しにそんな彼を見ながらドキドキしたのを覚えている
そんなあの日を思い出し涙が溢れた
大切な大切な写真だった
そんな特別な写真が遺影に・・・
これでいいんだよね?
よしに呟いた。
by yoshi721chii
| 2015-09-12 22:05
| 後悔の日